示談交渉

交通事故で、加害者が示談を急ぐ理由!正しい対処方法は?

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交通事故に遭って治療を継続していると、加害者が急いで示談を進めようとしてくることがあります。

この場合、被害者としては戸惑ってしまうことも多いのですが、どのように対処するのが良いのでしょうか?

加害者がどうして示談を急いでくるのかも、知っておくと役に立ちます。

そこで今回は、交通事故で加害者が示談を急ぐ理由と対処方法を解説します。

1.加害者本人が示談を急ぐ理由

訴える男性

相手が示談を急いでくる場合、加害者本人が急いでいるケースと、加害者の保険会社が急いでいるケースがあります。

加害者の保険会社は加害者の代理人ではありますが、加害者とは異なる利害を持っているためです。

以下ではまず、加害者本人が示談を急ぐ理由を、見てみましょう。

1-1.交通事故を起こした場合の加害者の罪

加害者が示談交渉を急ぐのは、示談が成立すると加害者の刑事事件が加害者にとって、有利になるためです。

交通事故を起こすと、加害者に自動車運転致死傷罪が成立することがあります。

悪質な場合には、危険運転致死傷罪が成立してしまいます。

どちらも「犯罪」であり、刑事罰があります。自動車運転過失致死傷罪の場合には、7年以下の懲役または禁固もしくは100万円以下の罰金刑です。

危険運転致死傷罪の場合、罰金も禁固刑もなく、必ず懲役刑が選択されます。

傷害事故で済んだ場合でも15年以下の懲役、死亡事故を起こしたら1年以上の有期懲役となり、非常に刑が重くなります。

懲役刑や禁固刑が選択された場合、執行猶予が着かない限り、加害者は交通刑務所という刑務所に行かなければなりません。

そうなると、仕事も辞めないといけませんし、家族関係などにも大きな影響が及ぶでしょう。

そこで、加害者は、何とかして軽い刑にしてもらいたいと希望します。

1-2.被害者と示談ができると、加害者の刑罰が軽くなる

加害者が刑事事件で刑を軽くしてもらうためにもっとも有効な方法は、被害者と示談をすることです。

示談ができると、それが良い情状として評価されるためです。

たとえば、起訴前に示談ができていたら、起訴されないで済むのでそもそも裁判を受けずに済む可能性が高くなります。

起訴後に示談ができた場合でも、受ける刑を軽くしてもらうことができます。

たとえば、本来執行猶予なしの懲役刑が相当な事案でも、示談ができたら執行猶予をつけてもらえる可能性があります。

本来懲役刑が相当な事案でも、示談ができていたら罰金刑で済ましてもらうことも可能となります。

そこで、加害者としては、何としても早期に示談を成立させたいと考えます。

なお、示談が成立したときに刑を軽くしてもらうには、実際に支払いを完了している必要があります。

約束だけができていても、実際に支払が行われていない状態では、被害者に有利な情状として考慮してもらうことができません。

1-3.結審前に示談する必要がある

加害者が示談を急ぐのは、示談にタイムリミットがあるからです。

まず、起訴を防ぐためには、検察官が起訴決定をする前に示談をして賠償金の支払をしてしまう必要があります。

加害者が警察の留置場に身柄拘束されている場合には、約20日の間に検察官が起訴決定をしてしまうので、その間に示談をしてしまわないといけません。

身柄拘束されていない事案でも、早めに示談をしないといつ起訴されるかわからないので、急ぐ必要があります。

また、裁判をされた後も、タイムリミットはあります。加害者の刑事裁判は、それほど長期間かかるものではありません。

通常は、起訴後2~3ヶ月もあれば終結します。

そして、示談はその裁判が「結審」する前に行う必要があります。

結審とは、すべての証拠の取り調べが終了して、後は判決するだけになった状態のことです。

結審後に示談をしたとしても、基本的には考慮してもらうことができないのです。

また、一審で判決が出てしまったら、控訴しないと覆すことができません。

控訴審で判決が出てしまったら、もはや刑を変更してもらうことはほとんど不可能となります。

つまり、刑事裁判では、判決が出てからでは示談をしても、まったく考慮してもらうことができないのです。

そこで、加害者は、とにかく急いで示談をまとめようとします。

以上のようなことが理由で、交通事故後間もない頃に、加害者やその代理人弁護士から示談の申し入れがあることがありあす。

 

2.加害者の保険会社が示談を急ぐ理由

保険の文字と虫メガネ

加害者が示談を急ぐ場合、加害者の保険会社の事情によることもあります。

加害者の保険会社は、加害者本人とはまったく異なる事情で示談を急いできます。またその手段も、加害者本人のものとは異なります。

以下では、加害者の保険会社が示談を急ぐ理由を見ていきましょう。

2-1.慰謝料が低くなる

交通事故後、早めに示談をしないと、加害者の保険会社が支払う慰謝料が高額になります。

それは、被害者が入通院によって治療を行う場合「入通院慰謝料」という慰謝料が発生するためです。

入通院慰謝料とは、被害者がケガをして入通院が必要になったことによって発生する慰謝料のことです。

入通院の期間が長くなればなるほど、金額が高額になります。

そこで、早期に治療を打ち切らせて示談を開始することにより、相手の支払金が少なくなり、相手に利益となるのです。

相手の任意保険会社は、示談が成立したときに加害者の代わりに示談金を支払わないといけないので、なるべく減らそうとしてきます。

入通院期間が延びると、入通院慰謝料が百万円を超える高額な金額になるので、治療期間が長引いてきたな、と感じると、慰謝料を減らすために示談を急がせようとするのです。

2-2.治療費が少なくなる

交通事故のケガの治療費は、損害の一内容となります。

そこで、発生した治療費は、相手の保険会社が支払をしないといけません。

治療期間が長引くと、その分治療費が多額になるため、相手の保険会社が負担する治療費の金額が上がってしまいます。

治療費が損害として認められるのは、症状固定をして示談交渉を開始する前の時点までなので、早く示談交渉を開始したら、その分治療費を少なくすることができます。

そこで、相手の保険会社は、自社の治療費支払いを減らすために、早期に示談をするように急かしてきます。

2-3.任意保険会社の負担分が小さくなる

自動車保険には、任意保険と自賠責保険の2種類があります。

被害者が示談交渉をする相手は「任意保険」です。

自賠責保険は示談を代行することはありません。

交通事故の自動車保険は、2段階の制度になっています。最低限度は自賠責保険が負担することとなっていて、それを超える金額は任意保険が支払うことになっているのです。

そこで、自賠責保険の限度額の範囲内であれば、任意保険会社に支払は発生しません。

ところが、治療期間が長引いて入通院慰謝料や治療費が上がってくると、任意保険に支払が発生する可能性が高くなり、その金額も上がってしまいます。

そこで、相手の保険会社は、なるべく早めに示談をして、自社の負担を抑えようとするのです。

2-4.被害者が知恵をつけないうちに示談をしたい

相手の任意保険会社にとって、被害者が交通事故についてのいろいろな知恵をつけることは、なるべく避けたいものです。

被害者が何も知らない場合には、ほとんど任意保険会社のいいなりで、示談を進めることができて、支払を抑えることも可能となります。

これに対し、被害者が知識をつけて、「正しく計算してほしい」とか「その認定方法はおかしい」などと言い出したら、なかなか話がまとまらなくなります。

弁護士に示談交渉を依頼されたら、高額な弁護士基準を適用されて、さらに示談金が上がってしまうおそれが高いです。

そこで、保険会社としては、なるべく被害者が余計な知識をつけないうちに、示談をまとめてしまいたいと考えています。

被害者に考える暇を与えない方が好都合ですから、示談を急がせてくるのです。

以上のように、加害者の保険会社が示談を急ぐのは「支払を抑えるため」というのが主目的です。

あくまで「刑を軽くしたい」という加害者本人の事情とは全く異なります。

また、加害者の保険会社には、加害者の場合と違って「刑事裁判終了まで」のような「タイムリミット」はありません。

 

3.被害者が示談を急ぐことのデメリット

以上、加害者や加害者の保険会社が示談を急ぐ理由を説明してきましたが、このどちらも被害者側にとっては無関係な加害者側の事情です。

示談を急かされたときに、安易に応じて早めに示談をしてしまうと、大きな不利益を受けるおそれもあるので、注意が必要です。

以下では、被害者が示談を急ぐことのデメリットを確認していきましょう。

3-1.入通院慰謝料が下がる

まずは、請求できる入通院慰謝料が下がってしまうおそれが高いです。

入通院慰謝料は、治療期間に応じて発生しますが、早期に示談交渉を開始すると、早期に治療を打ち切ることになるので、その分請求額が減ってしまいます。

これは、相手の保険会社が治療の終了を急かしてきたときでも、加害者本人が刑事事件のために急かしてきたときでも同じです。

そこで、治療を辞めて示談に応じるときには、本来請求できる入通院慰謝料を請求できなくなるかもしれない可能性を踏まえて、本当にその時点で治療をやめてよいのかどうかを慎重に判断しなければなりません。

医師に確認して、本当に症状固定しているのかや、治療を辞めてもよいのかなどの意見を聞いてみると良いでしょう。

3-2.適切な治療を受けられなくなる

治療途中で治療を打ち切って示談をしてしまったら、その時点までの治療費の支払いしか受けられません。

そこで、本来必要な治療を受けられなくなってしまうおそれがあります。

治療費は、「症状固定」したときの分までしか支払われないので、いったん示談交渉のために「症状固定」とみなしたら、それ以降の治療費を相手に負担してもらうことができないためです。

「やっぱりケガが治っていない」と思い、治療を継続するときには、すべて自腹になってしまいます。

そこで、相手が示談を急かしてきても、治療中の状態であれば、示談に応じるべきではありません。

3-3.後遺障害の認定を受けにくくなる

治療中であるにもかかわらず、早期に示談をしてしまったら、後遺障害の等級認定に不都合が発生するおそれがあります。

交通事故でケガをして後遺症が残ったら、後遺障害の等級認定を受けて、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

等級認定を受けるためには、最低でも交通事故後6ヶ月は経過していなければなりません。

それにもかかわらず、治療を早期に打ち切って示談交渉をしてしまったら、そもそも後遺障害を認めてもらうこともできません。

また、6ヶ月が経過していても、医学的にきちんと症状固定して後遺障害の認定ができる時期になっていなければ、認定請求をしても認められない可能性も高くなります。

後遺障害の等級認定を受けられない場合、後遺障害慰謝料や逸失利益の支払いを受けられないので、賠償金額は大きく下がってしまいます。

たとえば、後遺障害慰謝料は、1級の場合2800万円ですし、最低の14級(むちうちなどのケース)でも110万円です。

このような支払を受けられなくなることは、被害者にとって大きな不利益を言えるでしょう。

3-4.示談の条件が不利になるおそれ

示談交渉をするときには、急いだ方が不利になります。

結論を急ぐなら、どうしても条件を譲らざるを得なくなるためです。

相手が示談を急かしてきたとき、被害者も同じように気持ちが焦ってしまうと、不利な条件で示談してしまいがちです。

たとえば、相手の保険会社が低い金額の示談金を提示してきたときでも、被害者が急いだ気持ちになっていたら「もうそれでいいや」と考えて、適当に示談してしまうことがあります。

後から冷静になって考えてみたときに「やっぱり損になっているから、やめておけばよかった」と思っても、やり直すことはできないので、後の祭りになってしまいます。

以上のように、被害者が示談交渉を急ぐと、たくさんの不利益が及びます。

相手が示談を急いできても、相手のペースにはまらず、自分のペースで慎重に話を進めていくことが大切です。

 

4.加害者本人が急かしてくるケースでの正しい対処方法

以下では、加害者が示談を(先生)貸してきたときの対処方法を考えていきましょう。

まずは、加害者本人が示談を急がせてきたときの正しい対処方法を説明します。

4-1.金額が相場より高いなら、示談しても良い

加害者から示談を急かされている場合には、その金額が高いかどうかに注目しましょう。

相手は、刑事裁判で有利になりたいので、早期に示談をするために高額な提示をしている可能性があります。

もし相場よりも明らかに高額になっていたら、示談をしても不利益はありません。

4-2.有利な条件を引き出しやすい

相手が刑事事件のために示談交渉を急いでいるときには、被害者にとって有利な条件を引き出しやすいです。

加害者は、とにかく示談を成立させることを目的にしているので、多少支払が増えて自腹を切ってでも示談したいと考えているためです。

そこで相手に資力がある場合、被害者側が増額を希望すると、相手がそれに応じて金額を上げてくれる余地があります。

加害者と示談を進めるとき、「あと少し、支払を上乗せしてくれたら示談してもいい」、と考える場合には、その条件を相手に伝えて検討してもらうことも効果的です。

4-3.示談に応じても良いケース

加害者本人が示談を急いできたときに、示談に応じても良いケースは、以下のような場合です。

  • 損害が明らかになっている事故で、相手の提示する示談金が大きいとき

たとえば後遺障害が残らなかった事故などで、相手が明らかに大きな示談金を提示している場合などが該当します。

この場合示談に応じないで後で保険会社と示談をしても、それより低い金額の支払いしか受けられないおそれが高いからです。

  • 相手の提示する金額が、明らかに相場より大きいとき

後遺障害が残るケースなどでも、明らかに相場より高額な示談金を提示している場合などには、示談に応じると良いです。

相場がわからない場合には、弁護士に相談をして、示談することが得になるのかどうかを判断してもらいましょう。

4-4.嘆願書とは?

加害者本人が示談を急かしてくるとき、同時に「嘆願書」という書類の作成を依頼されることがあります。

嘆願書とは、どのような意味を持った書類なのでしょうか?

これは、被害者の立場から「加害者の刑を軽くして下さい」とお願いする書類です。提出先は、検察官や裁判所です。

刑事手続では、被害者の被害感情が非常に重視されています。

そこで、被害者が加害者を許していたり、罪を軽くしてほしいと考えていたりする場合には、加害者の刑が軽くなります。

そこで、加害者は、示談をすると同時に、被害者に嘆願書を書いてほしいと言ってくるのです。

ただ、嘆願書を作成するかどうかは被害者の自由ですから、これに応じないといけない、ということはありません。

嘆願書を作成しない限り示談ができないというものでもないので、「示談はしたいけれども嘆願書を書きたくない」、というときには、率直にその旨相手に伝えて交渉をすると良いです。

4-5.判決が出ると、放置されるおそれがある

加害者が刑事事件に有利になるために示談を急いでいるときには、判決が出るまでに示談をまとめたいというタイムリミットがあります。

そこで、頻繁に「示談してほしい」と言ってきていた場合でも、判決が出てしまうと、とたんに音沙汰がなくなる、というパターンが多いので、注意が必要です。

その後は、反対に被害者側から連絡を入れても無視されてしまうケースもあります。

つまり、被害者がいつまでも態度を決めずに話を引き延ばしていると、相手が示談してくれなくなるおそれがあるのです。

そこで、もし、「示談をしても良いかな?」と少しでも迷いがあるなら、弁護士に相談をして、相手の提示している条件が妥当かどうかを判断してもらうことをおすすめします。

もし、示談した方が得だということであれば、被害者としても示談に応じるメリットが大きくなります。

 

5.加害者の保険会社が急かしてくるケースでの正しい対処方法

次に、加害者の保険会社が示談交渉を急かしてくる場合の対処方法をご説明します。

5-1.治療を最後まで継続する

相手の保険会社が示談を急いでくるときというのは、相手が支払を減らすことを目的としています。

また、治療が終了したら自然と示談が始まるので急かす必要がなく、相手が示談を急かしてくるのは、治療継続中のケースであることが多いです。

そこで、加害者本人が示談を急かしてきたときとは違って、「示談すべきケース」というのはほとんどありません。必要なのは、治療を継続することです。

まずは、医師に症状固定の時期を聞いて治療終了予定時を確認し、相手の保険会社に伝えましょう。

そして、できるだけ治療費支払いを継続してもらえるように交渉を行います。

相手が強硬的に治療費の支払いを打ち切る場合には、治療費を負担してでも治療を継続する必要があります。

5-2.健康保険や労災保険を利用する

相手の保険会社が治療費の支払をしてくれなくなったとしても、治療を途中で打ち切ると不利益が大きいため、治療を継続しなければなりません。

このとき、治療費を全額自己負担とすると、非常に負担が大きくなってしまうので、健康保険などの他の保険を利用すべきです。

利用できる可能性があるのは、健康保険と労災保険です。

業務中や通勤中の事故で、交通事故が労災になる場合には、労災保険を利用することができます。

この場合には、被害者本人の負担が0になるので、非常に助かります。

それ以外の事故の場合でも、健康保険を利用することは可能です。多くの人の場合には、自己負担分が3割になります。

このとき、病院によっては健康保険の利用を断ってくることがあるので、注意が必要です。

交通事故後の治療でも健康保険は利用できるのですが、病院の収益が減ることなどがあって、「健康保険は使えない」と言う病院があるのです。

このようなことを言われたら、まずは病院との間で「健康保険を使えるはず」「健康保険を使えないという制度や法律はないはずです。どうして使えないのか、説明して下さい」などと言って交渉をしてみると良いです。それでも認めてもらえないときには、別の病院に転院すると良いでしょう。

 

まとめ

今回は、加害者が示談交渉を急いでくる理由と対処方法をご紹介しました。

加害者本人が示談を急かす理由と、加害者の保険会社が示談を急かす理由は、それぞれ全く異なるものです。

ただ、どちらにしても、被害者が治療を打ち切って早期に示談交渉を行うと、不利益が大きいので注意が必要です。

ただ、場合によっては示談に応じることによって得になるケースもあります。

相手が示談を急いできたときには、応じてもよいのかどうか、交通事故に強い弁護士に相談をしてアドバイスをもらうと良いでしょう。

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  • この記事を書いた人

福谷 陽子(元弁護士)

元弁護士。平成16年より交通事故や離婚、債務の問題を多く取り扱う弁護士として活躍。平成19年4月陽花法律事務所を設立。現在は、体調不良により、法律問題をわかりやすく解説するライターとして活躍中。

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